CX(カスタマーエクスペリエンス)とは何か?どのようにCXをデザインすればよいか?
カスタマーエクスペリエンス(CX)とは?
カスタマーエクスペリエンス(CX)とは、顧客が企業やブランドとの全接点において体験する総合的な印象や感情のことです。近年、企業経営において重要性が高まっており、とある調査によると約80%の企業がCX起点の経営に関心を持っています。これは単なるトレンドではなく、ビジネス成長の重要な鍵となっています。
CXの目標はROCXIの向上

CXの最終目標は「ROCXI(Return On CX Investment)」の向上です。つまり、CXへの投資に対するリターンを最大化することを目指します。ROCXIは以下の要素によって構成されています:
- 顧客維持:現顧客を維持し、離脱した顧客を引き戻す
- ライフタイムバリューの増加:顧客にいつも選んでもらえるようになる
- クチコミ:顧客が抱く企業への良い印象を顧客自身に拡散してもらう
- 経営効率:マーケティングコストの削減
効果的なCXデザインの3原則
優れたCXを実現するためには、以下の3つの原則に基づいてデザインと実行を行うことが重要です:
1. ブランドプロミスの定義
顧客に何を約束するか(Brand Promise)を明確に定義することがCXの出発点です。ブランドプロミスと実際の体験の一致度が顧客との関係強化に大きく影響します。とある調査では、以下のような結果が出ております。
- ブランドプロミスを下回る体験では、強い関係を築ける顧客は16%に留まる
- ブランドプロミスと一致した体験では33%
- ブランドプロミスを上回る体験では58%の顧客と強い関係を築くことができる
2. 機能面・情緒面での適切な価値提供
顧客体験は機能的なニーズを満たすだけでなく、感情的な結びつきを創出して強力な関係を築く必要があります。従来は「安さ」「機能の豊富さ」などのような商品・サービス自体の価値だけで差別化が出来ました。しかし「コト消費」への期待が高い時代においては、商品・サービスを利用することを通して得られる「感情(=情緒的価値)」が差別化へのカギとなります。
なおイプソスは産学協同による研究により、世界共通の情緒的価値フレームワーク「Forces of CX」を開発しています。
- Certainty(確実性):顧客にとって物事が明確で透明性があり、期待通りに機能していると感じる
- Control(コントロール):顧客が状況をコントロールし、主導権を握っていると感じる
- Fair Treatment(公平な扱い):顧客が企業と公平な取引をしていると感じる
- Enjoyment(楽しさ):顧客の生活をより便利にして、自由な感覚を感じるようになる
- Belonging(所属感):顧客が所属意識を持ち、企業が顧客に対して共通の利益に関心を持っていると感じる
- Status(ステータス):顧客は自分が大切にされ、特別な扱いを受ける価値があると感じる
これらの要素は「衛生要因」「付加価値」「差別化要因」に分類でき、市場のリーディングカンパニーは機能面・情緒面の両方において適切な価値を提供しています。
3. 従業員を通じた正しい顧客体験の提供
CXの成功には従業員の役割が極めて重要です。顧客が何を期待し、どう感じるかを従業員が正しく理解していなければ、質の高いCXを実現することはできません。顧客の期待と従業員の認識のギャップを特定し、それを埋めることが重要です。
経営幹部の70%が、従業員体験の向上が顧客体験の改善につながると考えています(Source: Forbes調査)。実際、従業員と顧客に同じ価値観やブランドプロミスを提示している企業では、顧客の「期待以下」の体験が12%に抑えられています。一方、従業員と顧客で異なる価値観を掲げる企業では48%に上昇します(Source: イプソス調査)。
加えて、従業員エンゲージメント(EX)向上→CXの向上→企業業績の向上という連鎖も確認されています。
具体的な例を挙げると:
- 従業員エンゲージメント(EX)の変化でCXの変化の32%を説明できるという結果が出ています。
- CXの向上が企業の財務業績を押し上げます。CXの変化で財務業績の変化の24%を説明できるそうです。
(Source: Chi and Gursoy, Employee satisfaction, customer satisfaction and financial performance: An empirical examination)。
従業員エンゲージメントに関する詳細は以下にてご確認いただけます。
企業の成功は従業員から - 従業員エンゲージメントサーベイで組織の真の姿を知る
まとめ:顧客と従業員の両方を中核に据えたCX向上で利益の最大化を
カスタマーエクスペリエンス(CX)は現代のビジネス環境において、単なる顧客満足を超えた戦略的要素となっています。本記事で解説したように、効果的なCXの実現には「ブランドプロミスの明確な定義」「機能面と情緒面の両方での適切な価値提供」「従業員を通じた正しい顧客体験の提供」という3つの原則が不可欠です。
特に注目すべきは、CXと企業業績との直接的な関連性です。また、従業員エンゲージメント(EX)とCXの密接な関係も重要なポイントです。従業員が企業の価値観やブランドプロミスを理解・体現することで、顧客に一貫した質の高い体験を提供することが可能になります。これからのビジネス成功には、単なる製品・サービスの機能や価格だけでなく、顧客との感情的なつながりを構築する「情緒的価値」の提供が差別化の鍵となるでしょう。企業はCX戦略を経営の中核に据え、顧客と従業員の双方を中心に据えた包括的なアプローチを取ることで、持続的な成長を実現できるのです。
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